「自分の存在価値は何か?」という問い

今の季節キンモクセイの香りがどこからともなく香ってくる。
でも,キンモクセイの香りを嗅ごうと一生懸命になればなるほど,香りはかげず,何となく意識しない時にはしっかりと嗅げている。

働くとことも同じで,自から働くではなく,自ずから働いている状態でありたい。

自分の存在価値って何?

自分の存在価値は何だろう?自分が生きる意味はあるのか?誰もがこの命題(テーゼ)を持ちながら生きている。

私たちは,日々の仕事ではこれを説明できない。それどころか,仕事を価値にしてしまうと,仕事をする為に生きるのか,生きるために仕事をするのかでさえ,曖昧に感じてしまう。

でも私たちのこころの何処かで,根源的な生きるテーゼが必要であることを知っている。

だか,バクテリアや植物や動物などの生物は,そもそもこのテーゼは存在しない。生物にとってのテーマは,種の保存と生きることがテーゼなのだから。

ならば,この人間だけが持つテーマである存在価値を求めて,苦しみながらも働きながら生きていくにはどうしたらいいのだろうか。

ここで言う“働く“とは,仕事だけではなく,人間の生きる活動を通した生命の営みすべてを指す。

この働くことこそが,唯一人間が持つテーゼである存在価値を明確にする手段なのだ。

働くとは

“わたしの為に働く““他の人の為に働く“

自利利他の考えは,仏教用語で「自分の為に働くことは,他人ひいては社会の為になる」という意味で使われる。

自分の為に働くことで、他人ひいてはや社会の為にできることとは何か?という疑問とともに,次のことが理解される。

「自分は社会の一部であり,社会は自分の存在なくてして存在しない」

このことは,自分の存在を自覚すればこの関係は当然である。

ならば,社会の為にできることとは何か,何ができるのか?

このテーゼでなぜ悩むのか,これは過去に解決できなかったものが自分にとってのテーゼであったから。でもこのテーゼの裏には,過去に手に入らなかった物や,過去の苦い経験がベースにあったからだ。

でも,今ここに、すべてにおいて揃っている。物も,人も,知識も,パワーも,世界のすべてが揃っている。

それに気づかずに終えるか,それに気づき,役割を果たすか。サイは自分に預けられている。この自分の生きる価値に気付き,いざ自分の為いや、社会いや、人類いや、世界の為に働く時なのだ。

遺漏なく身体を働かせる

今の季節、キンモクセイのかおりは何処からともなく漂ってくる。

でも、いざキンモクセイの前に立ち匂いを嗅ごうとすると、途端に匂いが嗅げなくなることはないだろうか。わたしは何度もある。その際には自己が妨げになるのだ。

また、プレゼンの時、思い通りに自分の言葉でうまくアピールができないことは誰れしも一度や二度あったでしょう。この時、失敗した瞬間に、それまで好意的であった自己が、急に自己にダメ出し側に回る。そしてわなわなとなってしまう。

いくら能力がいくらあってもプレゼンの場において,自分の思い描いた力が発揮できないとこは誰しもがあること。

この焦りは、自己が自己の能力発揮を妨げているのである。

あーだのこーだのいう内なる自己は、何かに理由を付けて能力発揮の邪魔をする。集中を妨げる。これが遺漏である。

自己は、敵ではない。自己は、すでに身体の調整力という働きによって備わっている。今も、座っている・立っている・寝ていることができていることがその証拠だ。

能力発揮に大切なのは、自分のすでに持っている能力に気づくことである。そして、この生まれ出ずるいのちのエネルギー遺漏少なく伝えることが働きのにおけるコツである。

身体に判断を任せる

改めて問う、自己の存在価値とはテーゼは何か?

自己が存在しているという事実は変えようもない。だだし、他者の感覚が己では解らない以上、自己の感覚でのみにこの世界は実在する。

ならば、他者が何をしようとも何を考えようとも、他者が何をしてもしなくとも、それはすべて正しい。

一方で、自己のアタマはアタマの、身体は身体の判断すべて正しい。

これは、ただこの身体に存在する体細胞が握る。体内にある60兆個もの体細胞が醸し出す選択であるから、答えは実はかなり多様であろうことは推察される。存在価値の答えは、この60億個の細胞ひとつひとつが握っている。

このひとつひとつの細胞が出す答えは計り知れない。でも、唯一のテーゼに対する答えは、体感覚が教えてくれる。

体感覚を感じることは、キンモクセイの香りのように存在を意識すると途端に遠のいてしまう。でも、意識をせずにテーゼに注意深く探っていると自然に感じられる。

適切な力で、時間を振り分けながらじっくりと観察を惜しまなければ、キンモクセイの香りのように存在価値は細胞が教えてくれる。自己はそれをじっと観察するだけでいい。